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消化管外科

食道・胃・小腸・大腸・肛門に発生する様々な疾患を対象に治療を行っています。診断から治療までを消化器内科、画像診断科と連携を取りながら行い、全ての症例を合同カンファレンスで検討して、診断精度の向上に努めています。治療に際しては常に最新の情報をもとに、患者さんの状態や病気の進行度に応じた最良の治療法を提供できるように努力しています。特に悪性腫瘍に対しては、手術のみならず、化学療法や放射線治療を取り入れた集学的治療による治療成績の向上を目指しています。また多くの治験や臨床試験に参加し、将来の治療成績の向上や、新しいガイドラインのエビデンス構築に貢献できるように努めています。

食道癌Esophageal Cancer

食道癌に対する治療法には、内視鏡治療、手術、放射線療法、化学療法があり、これらを組み合わせた集学的治療によって、治癒や延命を目指した治療を行います。私達は、患者様の併存症や生活強度などの全身状態と癌の進行度を総合的に評価し、一人一人にとって最適と思われる治療法を選択するようにしています。
当科における食道癌切除症例数を図1に示します。当科では、2011年から胸部、腹部操作を完全内視鏡下で行うminimally invasive esophagectomy(MIE)を導入しました。それ以降、従来の開胸手術は年々減少しMIEの割合が増えてきています。2019年度は食道切除術の95%がMIEでした。MIEはより小さい創で食道切除を行うことができるため、痛みの軽減や美容的な面で有用です。また、拡大視効果で肉眼では見えなかった細かい神経や血管を確認できるようになり、より繊細で質が高く出血の少ない手術が可能になっています(図2)。現在では、MIEの適応を徐々に広げ、術前に化学療法や化学放射線療法(CRT)を行った症例にも安全にMIEを行っています。また2018年4月から食道癌に対するロボット支援手術、縦隔鏡下の非開胸食道切除手術が保険適応となりましたが、当科でも今年中にロボット手術を導人する予定です。

食道癌の治療方針は外科、内科、放射線科によるカンファレンスを通じで決定しています。毎週、治療の適応、手術前後の症例の見囲しを合同で行い、様々な角度から診療内容を検討します。早期食道癌に対しては、機能温存の観点から内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行います。治療は主に消化器内科に施行していただいていますが、適応の判断は合同カンファレンスを通じて行われ、治療後の病理結果によっては、追加治療として手術やCRTを行います。近年では、根治的CRT後の遺残・再発表在病変に対するESD(サルベージESD)も積極的に行っており、良好な治療成績が得られています(図3)。

  • 図1.食道癌切除症例数の年次推移
    図1:食道癌切除症例数の年次推移
  • 図2:胸腔鏡・腹腔鏡下食道切除
    図2:胸腔鏡・腹腔鏡下食道切除

局所的な高度進行癌や併存症などで手術が困難な患者様に対しては、CRTを行っています。2019年度には23例の患者にCRTを行いました。他臓器浸潤を認める進行癌であっても、CRTのみで根治に至る症例を31%認めました。また、根治的CRT後に癌が遺残した症例に対するサルベージ手術(救済手術)など侵襲の大きな手術も積極的に行っています。これまで当科では57例のサルベージ手術を行ってまいりましたが、在院死亡例は認めていません。さらに、CRT後にも腫瘍が気管に浸潤していて合併切除が必要な症例に対しては、耳鼻科・心臓血管外科と合同で、咽・喉頭食道摘出術・縦隔気管孔造設術(いわゆるGrillo手術)なども積極的に行っています(図4)。かつては長期生存が望めなかった進行症例に対しても、CRTは有望な治療の選択肢の一つとなっています。当科はJCOG食道がん、WJOG、JFMC、KSCCなど臨床試験グループの参加施設であり、食道癌に対する標準治療の確立と進歩を目的として様々な研究活動(多施設共同臨床試験)を行っています。また様々な治験に積極的に参加し、さらなる食道癌治療成績の向上を目指しています。とくに本庶佑 京都大学特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したことでも注目を集めた免疫チェックポイン卜阻害薬の治験には、積極的に多くの症例を登録しています。当科からも症例登録を行ったATTRACTION-3試験において、抗PD-1抗体ニボルマブが化学療法に対し、進行・再発食道筋患者の全生存期間を統計学的に有意に延長させることが示されました。この結果をうけて、今年2月から、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌に対して保険診療としてニボルマブを使用することが可能となり、当科でも実際に使用を開始しています。

  • 図3:サルベージESD
    図3:サルベージESD
  • 図4:咽・喉頭食道摘出術・縦隔気管孔造設術(いわゆるGrillo手術)
    図4:咽・喉頭食道摘出術・縦隔気管孔造設術
    (いわゆるGrillo手術)

私達は、食道癌のhigh volume centerの役割として、日々経験するたくさんの症例から新しいエビデンスを作り上げていくことを重要視しており、これまで構築してきた食道癌データベースを用いたTranslational research(橋渡し研究)を推進しています。特に、現在注目を集めている腸内微生物叢(Gut microbiome)に関しては力をいれて研究を行っています。歯周病の原因菌であるFusobacteriumが存在する食道癌症例は悪性度が高く、抗癌剤も効きにくいということを世界に先駆けて報告しています(Clin Cancer Res 2019)。今後もさまざまな臨床研究を通じて、食道癌手術の成績向上及び病態解明に貢献できるよう努めていきたいと思います。

最後に当科の食道癌の治療成績(5年生存率)を示します(図5)。今後も治療成績の向上に努めていきたいと考えています。

図5:食道癌手術症例の治療成績
図5:食道癌手術症例の治療成績

胃癌・GISTGastric Cancer

胃癌は本邦において罹患率が第2位(男性では第1位)、死亡率が第3位と頻度が高い悪性疾患です。胃癌の診断および治療は日進月歩で発展し、平成30年1月に『胃癌治療ガイドライン第5版』が発行されました。当科ではガイドラインを基本として、更に患者様の状態や癌の進行度に応じて、「個別化治療」を目指した診療を行っています。

胃癌の検診やスクリーニングの普及により多くの早期胃癌の発見が増加しています。リンパ節転移の可能性が極めて低い早期胃癌に対しては、消化器内科と連携し内視鏡的切除(EMR、ESD)を行っています。
内視鏡治療適応外の早期胃癌に対しては、腹腔鏡下手術を積極的に行っています。根治性を損なわず、低侵襲ならびに臓器温存を目標として、上部早期胃癌に対しては腹腔鏡下噴門側胃切除を積極的に行っています(図1)。腹腔鏡による拡大視効果を生かした機能温存とリンパ節郭清の徹底を図ることにより、低侵襲性と根治性の両立を目指し、さらにはQOLの向上も目指しています。

図1:腹腔鏡下噴門側胃切除術(ダブルトラクト再建)
図1:腹腔鏡下噴門側胃切除術(ダブルトラクト再建)

平成31年4月より胃癌に対する胃全摘、噴門側胃切除、幽門側胃切除の3術式に対して、手術支援ロボット"da Vinci”を用いたロボット手術が保険収載されました。“da Vinci”の特性である高解像度3D画像、多関節機能、手振れ防止機能を用いて、従来の腹腔鏡手術よりも精密で安全性が高い手術が可能となります。当科でもロボット手術を導入し、良好な手術成績を収めています。
ステージIV胃癌に対しては化学療法を行っています。治験や臨床試験に登録することで、一般診療では使用できない最新の抗癌剤も使用可能です。近年、新規抗癌剤、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害剤の開発により、ステージIV胃癌の治療成績は改善してきています。化学療法が奏功し、非治癒因子が消失した症例に対しては積極的に根治切除(conversion surgery)を行っています(図2)。Conversion症例では平均生存期間が34ヵ月と良好な治療成績を得ています(図3)。

図2:Conversion surgery
図2:Conversion surgery
  • 図3:Conversion症例の治療成績
    図3:Conversion症例の治療成績
  • 図4胃癌の治療成績(2005年~ 2018年)
    図4:胃癌の治療成績(2005年~ 2018年)

当科での胃癌の治療成績(5年生存率)を示します(図4)。大学病院にご紹介いただく患者様は、ご高齢、高度進行癌、重篤な合併症を有するなど、年々ハイリスクの方が増えてきています。各診療科と協力しながら術前、術中、術後の管理を行い、安全な手術を受けていただけるように心がけています。
当科では希少疾患とされている消化管間質性腫瘍(GIST)や肉腫に関しても多くの症例を経験しています。巨大腫瘍に対しては根治切除が可能な症例には積極的に切除を行っています(図5)。また、再発あるいは遠隔転移を有するGISTに対しては分子標的治療薬を用いた化学療法を行っています(図6)。

  • 図5:腹部大動脈を取り囲む肉腫に対する腫瘍切除、大動脈合併切除、人工血管置換術
    図5:腹部大動脈を取り囲む肉腫に対する腫瘍切除、大動脈合併切除、人工血管置換術
  • 図6:胃GIST、多発肝転移に対するイマチニブ療法
    図6:胃GIST、多発肝転移に対するイマチニブ療法

大腸癌Colorectal Cancer

日本における大腸癌の現状は、罹患数約16万人(1位)、がん死亡数は5万人(2位)を超え、がん診療の中で大きなウェイトを占めています。我々は外科治療を中心とした集学的治療によって、大腸癌に戦いを挑み治療に貢献したいと思っています。この集学的治療の充実のために、他診療科•他職種との細かな連携を取りながら、大腸癌治療成績の向上を目指しています。当科での大腸癌切除症例の治療成績を示します(図1)。 Stage III/IV進行癌の治療成績に改善の必要性を感じています。

図1:大腸癌の治療成績
図1:大腸癌の治療成績

【様々な低侵襲手術】
当科では、癌の進行度に応じ、根治度を損なわない症例では基本的に腹腔鏡手術で行っています(図2)。腹腔鏡手術により、痛みの軽減、入院期間短縮、術後回復時間短縮、および創傷感染・ヘルニアなどの術後合併症の発生率の低下が期待されます。また、拡大視効果による正しい剥離層の理解のもと、より質の高い癌手術が可能になります。特に下部直腸癌に関しては手技の安定化により、肛門温存率が向上しています。また、肝臓外科医の協力のもと 、同時性肝転移を有する大腸癌に対する腹腔鏡下大腸肝同時切除術も多数行っています。
進行癌による閉塞性大腸癌に対しては、消化器内科の協力のもと、大腸ステント留置の治療が確立しました。これにより緊急性の高い症例でも対応が可能となり、十分な減圧が得られてから大腸切除と一期的な再建を行うBridge to Surgeryを行っています。大腸癌以外の疾患としては潰瘍性大腸炎(UC)や家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘術や複雑な憩室炎に関しても腹腔鏡手術を積極的に行っています。
また、当科では2年前よりロボット支援下直腸手術を行っており、トレーニングを積んだ外科医により安全性を保ちながら手術を行っています(図3)。従来の腹腔鏡手術と比較したロボット手術のアドバンテージとして、3Dハイビジョンカメラによる視覚化の向上、多関節鉗子、モーションスケーリング及び手振れ防止機能により、骨盤内の狭い術野で正確な操作性が可能なことがあげられます。これにより、難易度の高い男性の肥満症例や、より複雑な直腸癌症例を含む多くの患者で有用性を発揮でき、外科的剥離断端の確保と神経温存に関して手術成績の向上が期待されます。

【安全な外科治療をめざして】
このような低侵襲手術では安全性の確保が重要となりますが、すべての低侵襲手術に内視鏡外科技術認定医が術者あるいは指導的助手として参加し、安全性に配慮しています。術後合併症、特に縫合不全については、蛍光色素を用いた血流確認をはじめとしたさまざまな取り組みにより発生率は徐々に低下しています(2019年:2.4%)。さらにさまざまな併存症をもつ高齢者や、より複雑な病状の方に対しても他診療科や栄養科、リハビリテーション科と協力し、術後順調に回復されるよう包括的な診療を行なっています。外科手術以外にも大腸がんまたは遺伝性がんの家族歴がある人を対象に、遺伝子検査とカウンセリングも提供しています。

【局所進行がんに対する拡大手術】
低侵襲手術だけでなく、他臓器浸潤を伴う局所進行大腸癌や、直腸癌術後の骨盤内再発、骨盤内巨大腫瘍などに対する拡大手術にも取り組んでいます(図2)。特に、他臓器浸潤が疑われるような進行癌に対しては、術前補助化学療法を行い、癌の遺残がないR0切除が可能かどうかを慎重に判断したうえで、他臓器合併切除を伴う拡大手術(骨盤内臓全摘術、仙骨合併切除など)を行っています。

【切除不能大腸癌に対する集学的治療】
最近の薬物療法の進歩によって、切除不能・進行再発大腸癌の治療アルゴリズムが多様化・複雑化しています。また大腸癌治療には、癌自体の特性とともに患者自身の状態や社会的背景を踏まえた治療が望まれています。さらに個々の癌のゲノム情報から最適な治療方法を分析・選択するという新たな治療戦略が重要視されており、専門的な知識を持った医師による集学的治療が求められています。我々は患者一人一人に対して最大限に治療効果が発揮できるレジメンで、副作用への対応にも十分配慮し、長期に渡り治療が継続できるよう心がけています。
症例によっては切除不能な病変が切除可能となりうるConversion症例も多く経験しており(図4)、スムーズに外科治療に移行できるよう治療計画を行っています。肝転移症例はもとより肝外転移を有する場合でもチャンスがあれば外科的に根治切除を狙っていきます。当科の経験でも、化学療法後に外科的治療を行えた症例は予後が大幅に改善することがわかっています。
これら標準治療の他、さらに優れた治療法の開発を目指した多くの治験・臨床試験に関わっていき、新しいエビデンスの構築にも貢献しています。外来化学療法センターのスタッフ(看護師、薬剤師、腫瘍内科医、地域連携、緩和)ともカンファレンス等を通じで情報を共有し、個々の患者の満足度を上げるべく環境づくりに力を入れています。

【おわりに】
当科ではがん制御のために、標準的治療と個々の症例に対する個別化治療のバランスを常に考えながら包括的な診療を行うことを目指しています。大腸癌治療成績改善のため、高度なレベルの診療に取り組みます。

図2:腹腔鏡下直腸手術
図2:腹腔鏡下直腸手術
  • 図3:ロボット支援下直腸手術
    図3:ロボット支援下直腸手術
  • 図4:大腸癌肝転移Conversion症例
    図4:大腸癌肝転移Conversion症例
©2018 kumamoto-gesurg