Message from Professorごあいさつ
教授挨拶Message from Professor
熊本大学大学院 生命科学研究部
消化器外科学
教授岩槻 政晃
熊本大学大学院消化器外科学は、2005年(平成17年)4月1日に開講し、今年で20周年を迎えます。私は2024年7月1日付で第2代消化器外科学教授を拝命し、この1年間、診療・研究・教育のすべての分野においてさらなる発展を目指して邁進してまいりました。初代教授である馬場秀夫先生の偉大な業績を受け継ぎ、本教室のさらなる飛躍に貢献できることを光栄に思うとともに、その責任の重さを改めて実感しております。
診療:高度・多様化する医療への対応
日本人の死因第1位である悪性新生物のうち、消化器がんは約半数を占めています。当科では高難度手術や重症患者の治療を担い、外科治療のみならず化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的治療を実践しています。さらに、消化器外科領域のすべての術式にロボット支援手術を導入し、精密で低侵襲な治療を提供するとともに、県内医療機関への技術普及にも貢献しています。また、肥満症治療センターを新設され、減量・代謝改善手術にも取り組んでいます。加えて、急性期外科治療(Acute Care Surgery)の専門医が在籍し、救急部と連携して急性腹症や外傷などの緊急手術にも対応することで、地域医療への貢献にも努めています。
本院は県内唯一の特定機能病院であり、地域医療における「最後の砦」として重要な役割を担っています。本教室が地域の皆様に信頼される医療機関であり続けるために、地域医療機関との連携を強化し、包括的で質の高い医療サービスを提供していくことが重要であると考えています。患者様一人ひとりの病態や背景に応じて、根治性と安全性のバランスを追求するとともに、QOLにも十分配慮した最適な治療の提供に努めています。
研究:トランスレーショナルリサーチと国際共同研究の推進
本教室の強みである臨床検体・臨床情報を活用したトランスレーショナルリサーチをさらに推進し、臓器・診療科横断的な独創的研究に取り組んでいます。また、AIを活用した診断技術の開発や新規治療法の確立にも注力し、がんの個別化医療や新規バイオマーカーの探索を進めています。
がん研究の高度化に伴い、学内外の基礎研究講座や企業との医工・産学連携を強化し、「競争」のための「共創」を実践しています。さらに国際共同研究にも積極的に参画し、海外研究機関との連携によるグローバルな研究展開を進めることで、世界水準の医療の発展にも貢献してまいります。外科医ならではの視点と独創性を重視した研究を推進しています。
教育:次世代の外科医・研究者の人財育成
医学部教育では、early exposureを通じて学生が外科医療の魅力に触れ、外科医としての使命感を抱くきっかけとなるよう努めています。卒後教育では、wet/dry labトレーニングを活用して低侵襲手術の技術習得を支援し、外科治療への理解と興味を深められる教育体制を整えています。大学院教育では、がん研究を基盤とし、高度化・専門化したがん医療に対応できる“Academic Surgeon”の育成を目指し、優れた手術手技と研究マインドを兼ね備えた外科医の養成に取り組んでいます。医学部教育・卒後教育・大学院教育をシームレスに統合し、どのフェーズにおいても医師としての倫理観を備えた外科医の人財育成に力を注いでいます。外科医の育成は10年、20年で成果が現れるものではありません。だからこそ長い時間軸を見据え、粘り強く教育に取り組んでいます。優れた技術を身につけることはもちろんのこと、患者さんの痛みや不安に寄り添うことのできる外科医を育てることを、私たちの教育の根幹と考えています。
医療者のwell-beingの向上
2024年4月より医師の働き方改革が開始されました。世の中では”ワークライフバランス”が叫ばれておりますが、外科医が減少する中、”ワークライフインテグレーション”へシフトする必要があると考えます。医療従事者の健康や職場環境の向上にも注力し、それぞれが「VISION ZERO」を達成することを目指しています。本教室のキャッチワードは”Well-being”です。患者様の”well-being”のため日々、邁進する教室員も”well-being”でなければなりません。教室員一人ひとりがwell-beingを実感できる体制を構築し、若手医師に魅力的な教室を目指してまいります。
熱と誠をもって、未来へ
熊本大学医学部の偉大な先達である北里柴三郎先生は、「人に熱と誠があれば何事も達成する。世の中は決して行き詰まらぬ」と述べられました。私もこの言葉を胸に、「熱」と「誠」をもって診療・研究・教育に取り組み、本教室、熊本大学病院、そして熊本県の医療の発展に貢献するとともに、熊本から世界へと発信する外科医療の創出を目指してまいります。柴三郎先生の言葉のとおり、志を持って挑戦する限り道が閉ざされることはありません。外科医療には、人の命と真摯に向き合いながら自らも成長できる大きな魅力があります。志ある若い医師が、この教室から新たな一歩を踏み出してくれることを願っています。
令和8年(2026年)4月
熊本大学大学院 生命科学研究部 消化器外科学
教授 岩槻 政晃