教室紹介
教室の目標
外科医は ”Surgical artist” であり、”Surgical scientist” でなければならない。
『臨床』、『研究』、『教育』の各分野における”経験”を重視した、
疾患別グループによる積極的な研究活動を行います。
臨床、研究、教育の経験
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- 高度な手術手技
- 先進医療
- 手技の工夫
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- 発癌のメカニズム
- 癌の発育・進展
- 効果的治療の確立
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- 人間性の涵養
- 知識の運用(問題解決型)
- 手技のトレーニング
教室の取り組み
消化器外科医を目指す若人のための鏡視下手術トレーニングを行っています。(学生対象)
今や日本での鏡視下手術の症例は伸び続けており、今から消化器外科医を目指す皆さんには必須手技になることが予想されます。 そこで、当科では消化器外科医を目指す若人にいち早く、手術の難しさ、楽しさを実感していただくために、鏡視下手術のトレーニングを行っています。腹腔鏡下手術トレーニングシミュレータを用いた鏡視下手術の基本鉗子操作の習得や腹腔鏡下胆嚢摘出術の疑似体験、さらにはドライボックスを用いた結紮縫合手技の習得を通じて、外科医としての達成感、充実感をいち早く体験していただいています。2日間の集中トレーニングを行い、最終日にはトレーニング修了書を授与しています。
後期研修医を対象とした手術トレーニングも行います。
- 国内・海外留学
- 教室員には海外・国内留学を積極的に勧め、国際社会の中での日本の位置づけを意識させながら、研究・教育に取り組んでいます。今年度も多くの医局員が海外留学する予定です。
ご挨拶
熊本大学大学院 消化器外科学は2005年(平成17年)4月1日に、初代教授 馬場 秀夫先生が着任され、開講となりました。本年、2024年は開講20年目の節目の年となります。2024年3月末日をもちまして、馬場 秀夫先生が定年退官され、私が7月1日付で、第2代 消化器外科学教授を仰せつかりました。馬場秀夫先生の卓越した御指導と献身的な取り組みにより、わが消化器外科教室は大きな発展を遂げてきました。その偉大な業績を引き継ぎ、更なる高みを目指すことは大変光栄であり、同時に大きな責任を感じております。
診療においては、本院は熊本県唯一の特定機能病院である「最後の砦」です。癌診療が高度化、多様化する中、単一の診療科で診断、治療を行うことは困難です。様々な診療科、ユニットと絶えず円滑なコミュニケーションをとり、高度医療を実践するチームの一員として、取り組んでいます。同時に、消化器外科教室が地域の皆様にとって信頼される医療機関であり続けるために、地域との連携を強化し、包括的で質の高い医療サービスを提供していくことが重要だと考えます。地域医療機関との連携を深め、地域全体で患者様を支える体制を構築していきたいと思います。患者様の病態、背景に合わせ、根治性と安全性のバランスを追求すると同時に、QOLも重視した最適な治療を提供できるよう努めています。
研究においては、外科教室の強みである臨床検体、臨床情報を活用したtranslational researchに注力しております。とくに熊本大学病院バイオバンクは貴重なマテリアルであり、診療科横断的にoriginalityあふれる研究を目指しています。がん研究は高度化、多様化する中、一講座で研究を推進するには限界があります。基礎研究では学内の基礎講座と連携し、基礎の先生方が明らかにされた新たな知見を、臨床検体で検証することが外科教室の使命です。熊本大学医学部内だけではなく、熊本大学内はもとより、熊本県内、国内の企業との医工連携・産学連携とシームレスなコラボレーションを推進し、「競争」のための「共創」を行ってまいります。
教育においては、北里柴三郎先生の志を受け継いだ医学部の使命を実現すべく、医学部教育、卒後教育、大学院教育をシームレスに、どのフェーズにおいても医師としての倫理観と“bed to bench, bench to bed”を常に想起する外科医の育成に努めます。医学部教育では、early exposureにより、学生の外科治療への興味と使命感を鼓舞したいと思います。卒後教育では、外科医のやりがいを実感するには、wet/dry lab トレーニングが有用と考えます。本院総合臨床研修センターには、最新のシミュレータを用いた低侵襲医療のトレーニングの環境があります。急速に進んだ低侵襲手術のニーズに応えるべく、この領域を習熟する人材を育成します。大学院教育では、高度化、多様化した癌治療・癌研究に対応できる” Physician-Scientist” と “Academic Surgeon” の育成を目指します。日々の診療から問題点を想起し、仮説を立て、論理的に解決する能力は、癌の治療戦略の立案や手術手技、周術期管理を遂行するには必要なスキルと考えます。手術手技へのこだわりに加え、research midも兼ね備えた外科医の育成に努めます。
さて、技術革新が進む現代において、私たち医師は常に最新の知識と技術を取り入れることが求められます。一方で、2024年4月より医師の働き方改革が開始されました。世の中では”ワークライフバランス”が叫ばれておりますが、”ワークライフインテグレーション”へシフトする必要があると考えます。患者様、消化器外科学教室、熊本大学病院、熊本県内医療機関すべてが”well-being”を実感できる体制を構築し、若手医師に魅力的な教室を目指してまいります。
2024年7月3日より新たな日本銀行券が発行されました。新千円札の肖像には本学ご出身で「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎先生が選ばれました。柴三郎先生は、「人に熱と誠があれば何事も達成する。世の中は決して行き詰まらぬ」と述べられております。私も「熱」と「誠」をもって「終始一貫」、本講座、本院、熊本県内の医療の発展と医療人の育成、高度で安心、安全な医療が提供できるよう尽力する所存でございます。これからも皆様のご指導ご鞭撻を賜りながら、より一層の努力を重ね、患者様一人ひとりに寄り添った外科医療を提供することをお約束いたします。どうぞ、変わらぬご支援とご協力をお願い申し上げます。
令和6年7月
- 熊本大学大学院 生命科学研究部
消化器外科学 - 教授岩槻 政晃
教室の歴史・沿革
熊本大学消化器外科学教室は、熊本大学の大学院大学への改組に伴って平成15年の4月1日に誕生しました。それまでは旧1外科、旧2外科、それぞれに伝統が育まれてきましたが、統合により外科の中では最も大きな教室になりました。